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#1-1 厳冬期の伐採

#1-2 薪の含水率計

#1-3 薪重量(質量)の月日推移

#1-4 薪重量(質量)の推移(2023年2月6日~2024年1月6日)

#1-1 厳冬期の伐採

弊社では、「乾燥薪」を販売しています。乾燥薪としていますので、納品前に、簡易型デジタル含水率計でサンプリング測定し、15 % 以下であることを確認しています。含水率の 15 % を確実に達成するため、

(1) 薪用の広葉樹を伐採するのは、落葉した後、厳冬期。[P01]

(2) 全体で 30 トン程の原木を薪にするまで、2 ~ 3 ケ月の月日を要します。この間、原木は地上から 50 cm 離して保管。[P02]

(3) 薪ダナの床面は、地上から 50 cm 離し、風通しに配慮。

(4) 薪ダナの周囲は、ビニールハウス用のビニールで、薪から離して囲う。[P03]

等の配慮をしています。

以上の結果、伐採後 1 年経た乾燥薪でも、上の写真[P03]に示すように伐採直後の薪とほとんど変わらない綺麗な乾燥薪に仕上がっています。

結論になりますが、厳冬期(落葉後)の伐採が大事と考えています。その理由は、

(1) 春、夏、初秋、葉のついた樹木は、根から大量の水分を吸い上げており、この時期の樹木は含水率が非常に高く、乾燥に日数がかかる。

(2) 気温が温暖で葉のある時期、樹木の生長に不可欠な、葉で光合成された養分(糖)が、幹の表層にある形成層を通じて降りてくる。結果、葉のある季節(温暖な時期)に伐採した原木は、栄養が豊富であり、乾燥する過程でカビが発生、成長しやすい。

要は、カビを発生させる栄養が少ない厳冬期に伐採し、さらに厳冬期にできるだけ乾燥させ、カビ菌の成長を妨ぐことがポイントと思います。

ただし、厳冬期の伐採では、一旦、降雪があると、原木(伐採した幹)を搬出するトラックにとって氷結した道路は危険ですし、ぬかるんだ山道では進退に窮することもしばしばです。そもそも、近年、厳冬期に伐採させていただける広葉樹林がなかなか無く、薪販売の継続が困難になっています。

綺麗な乾燥薪を作るのは、意外にむつかしいです。

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#1-2 薪の含水率計

廉価な「薪用・小型デジタル・含水率計」は、電極間の直流抵抗を測定し、含水率に換算し表示させていると思われます。含水率には、乾量基準と湿量基準の少し異なる定義がありますが、この種の含水率計の表示を、乾量基準にするか湿量基準にするかは、軽微なプログラムの違いですから、製造メーカーの方針でどちらもありえます。

なお、このページで使用している“重さ”、あるいは“重量”という用語は、“質量”のことです。“質量”と記述してしまうと混乱される方がほとんどと思い、あえて“重さ”、あるいは“重量”という単語を使い回しています。ただし、それらは、“質量”と書くべきものであり、スカラー量で、単位は [ kg] す。

ちなみに、重さ、重量は、地球との万有引力に起因した力を表す量です。その単位は力を表すキログラム重[kgf]あるいはニュートン[N]です。さらに[kgf]は古い表示であり、現在の国際単位系 (SI) 、あるいは法定計量単位は[N]です。なお、力とは強さと方向を持つベクトル量です。

そもそも、[ 1 kgf ] とは、「標準重力加速度のもとで、1kgの 質量の物体に作用する重力の大きさ」として中学で習ったと思うのですが、これを素直に理解できた人が私には理解できませんでした。ニュートンという単位で力学を学ぶ現在の生徒さんはラッキーですね。

通常使用される体重計は、組み込まれているセンサーが力である重量を感じて測定していますが、表示は質量に換算した数字を示し、その単位はキログラム [ kg ] です。体重計が重さ、あるいは重量をセンサーで検出し、重さ、あるいは重量に換算して示すことも可能ですが、表示された数値の単位は、[ kgf ]、あるいは [ N ] でなければなりません。

日常、人間は、力である重量(重さ)を感じて生活しています。質量を感じるチャンスは、意識すれば時々ありますが、通常、気にしていないと思います。なので、多くの人が、「質量」と「重さ」で混乱するのもやむを得ないのではないでしょうか。

肉屋の秤は質量を表示していますが、そこで1kgの肉を購入した場合、1kg x 9.8 (重力加速度) ≒ 10 N の力に耐える袋に入れないと、袋は破けます。この 10 N が、質量 1kg の肉が私達に感じさせる重量という重さ、あるいはそれを持つ時に必要な力です。

乾燥薪にもどります。

乾量基準と湿量基準の含水率は、次式で求められます。

乾量基準の含水率=(含まれる水分の重さ/完全に乾燥した薪の重さ)× 100 (%)

湿量基準の含水率=(含まれる水分の重さ/水分を含んだ薪の重さ) × 100 (%)

例えば、手元に、含水率が 50 %、重さ 10 kg の薪があったとします。その場合、

乾量基準の場合だと、含まれる水分の量は 3.3 kg で、水を含まない薪の重さは 6.7 kg 、合計の重さは 10 kg になります。

湿量基準の場合だと、含まれる水分の量は 5 kg で、水を含む薪の重さは 10 kg になります。

よって、同じ含水率(50%)の薪であっても、薪に含まれる水分の質量は、

乾量基準の水分量(3.3kg) < 湿量基準の水分量(5kg)

になります。

使用している含水率計が、乾量基準、あるいは湿量基準のどちらを表示しているかは、含水率計の販売元に尋ねるしかないでしょう。

含水率が 50 %、重さ 10 kgの薪を燃やし暖を得ている時、3.3 kg 、あるいは 5kg の水を気化させる無駄なエネルギーを消耗していることになります。よって、ストーブ用の薪は、含水率が小さいことが大事になります。

一般的に、理想的な薪の含水率は、15 % 以下と言われています。勿論、含水率は小さいに超したことはありませんが、これを 10 % 以下にするのは、大変です。

さてここで疑問が生じます。

含水率計で表示される「含水率の値」は、どれほど正しいのだろうか?

(1) 薪の含水率は、薪の測定箇所で大きく異なるので、平均値を計算するにしても・・・。

(2) 簡易型デジタル含水率計は、電気抵抗を測定し、含水率に換算している。でも、抵抗値と含水率の関係は、木の種類にも依るだろうし・・。

ということで、NKRテクノでは、2023年2月4日に伐採した山桜とナラの薪をサンプルに、薪の重量推移を測定することにしました。

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#1-3 薪質量の月日推移

伐採直後の桜とナラを薪にし、それらの質量がどのように変化してゆくかを調べることにしました。ポイントは、

(1) 最初は、水分の蒸発にともない、(水分を含んだ)薪の質量は日々軽くなるが、その質量も、蒸発する水分の減少にともない次第に落ち着いてくる。おおむね、次式 (1-3) で近似できると予想。

$$M(t) = Mm + Mw(0) e^{-\frac{t}{d}}$$

t は、2023年2月6日をゼロとした、その後の経過日数(1日、2日—)を示す自然数。

M(t) は、測定した時の質量。

Mm は、水を含まない完全に乾燥した薪の質量。月日の経過で変化しない質量部分。

Mw(0) は、測定開始時(2023年2月6日)に薪に含まれている水分の質量。

d は、時定数で、2023年2月6日の “薪に含まれる水分” の 63% 程度が空気中に蒸発する日数を示しています。 “d=30” 程度になるのではないかしらと、測定開始時点で予想しています。

グラフの形が落ち着いてきた頃、グラフに上記の式で近似曲線をあてはめ、Mm、Mw(0)、d を推定することになります。

空気中の水分量、つまり湿度の影響は避けられませんが、データ数が増えれば、推定される Mm、Mw(0)、dの値の信頼性はある程度確保可能と考えています。

(1) 推定値になるが、含水率、乾燥日数が、含水率計で測定するよりは高い信頼性で評価可能と期待している。

(2) 梅雨に入って、空気中の湿気を吸い込み、質量が増えることがあるだろうか。これは不明。

(3) 晩秋(2023年11月頃)に、どの程度に質量が軽減しているだろうか。手元の含水率計で 15 %以下と予想。

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#1-4 薪質量の推移(2023年2月6日~2024年1月6日)

(2023年2月6日以降の計測結果)下記の写真は、少なくとも今年は続ける予定の実験状況を示しています。

(1) はかり

質量は廉価なデジタルはかり(手荷物の重さを確認する目的に販売されています)を使用しています。

最初に、体重計および調理用はかりと測定値を比較し、製造元がカタログに記載する各測定器の誤差範囲内で一致することを確認しています。認定機関で校正を受けることが望ましいですが、校正試験に耐えるような(高性能な?)秤でもないし、費用の関係で無理です。

(2) サンプル

試料にしたのは、2023年2月4日に伐採した山桜とナラです。直径が 30 cm の原木を、長さ 40 cm に玉切りし、薪にした後、各々2 個のグループに分けて縛り吊しています。

山桜は、S11~S14 を グループ S1 、S21~S24 を グループ S2 、ナラは、N11~N16 を グループ N1 、N21~N26 を グループ N2 としました。

実験場所は、南向き作業小屋に設けた前室?です。山桜とナラの4個のグループを、写真に示すように吊り下げ乾燥させ、質量推移を測定します。測定する時は動かします。なお、横殴りの雨では濡れることも想定しています。

(3) 質量変化推移

伐採した2日後の2023年2月6日から、上記写真に示すように吊り下げて乾燥を開始し、同時に質量測定を始めました。初日の質量を100 % とし、その後の変化をパーセントで表示しています。初日、 100 % の時の質量は、S1 (11 kg)、S2(13 kg)、N1(15 kg) 、N2(14 kg) でした。

乾燥が進んでグラフが平らになった頃、式 (1-3) をベースにカーブフィッティングにより近似曲線を当てはめ、完全乾燥薪の質量 Mm、含水率を知りたい月日 t の薪に含まれる水分の質量 “M(t) – Mm” (要は、式 1-3 の右辺第2項) 、乾燥時定数 d を推定したいと考えています。なお、 t は2月6日からの経過日数を示します。

ここの掲載したグラフは、仕事に隙間を作りつつ、測定し、時々更新させる予定です。

2023年3月7日 
最も軽くなった櫻の薪(赤色のS1グループ)は、伐採直後に比し、質量が 20 % 減少し、80 % に減少していることを示しています。仮に、伐採直後の薪の含水率が 40 % であったとしたら、また櫻の薪と水の比重が同じだとしたら、既に水分の半分が蒸発したことを示しています。当初、水分の蒸発速度の時定数を30日程度と推定していたので、そろそろ、質量の軽減速度は減少し出すと思っています。これからの一月が楽しみです。

2023年3月27日
重量が減少するスピードが小さくなってきました。
使用している質量計(電子秤)の経時変化、一定方向への測定誤差の変化が気になりますが、薪質量の測定の都度、基準錘の質量を測定し、測定結果を監視しています。基準錘と言っても、採用したのは、ホームセンターで販売されている「質量が6kgの漬物石」です。プラスティックでカバーされているので、吸湿の影響は小さいと推定しています。

2023年4月2日

今週は桜が満開。暖かい日が続き、薪も急速に乾燥したと思われます。秤で測定している基準錘の質量は、先週と同じ6.285kgで全く変化していません。

下記の図は、2023年6月18日までのデータをもとに描いています。

これまでの測定結果をもとに、【完全に乾燥した薪の質量】、【伐採直後の薪に含まれていた水分の質量】、【伐採直後の水分の63%が蒸発するに要する日数(時定数)】を推定し、図1-4-1の測定データから離れないように近似曲線を手描いています。正しくは、「近似曲線が測定結果から離れないように、上記3個の値を推定している」ということです。

表1-4-1は、伐採直後の薪束質量(実測値)と、3個の推定値を適当に変化させつつ、上に示す図1-4-2のカーブがこれまで(2月6日から6月18日)の実験値(グラフの点)に一番近くなるように試行錯誤した結果です。本来なら最小自乗曲線となるよう作業すればスマートなのですが、手抜きしています。

  • 時定数の日数が経過すると、63%の水分が蒸発し37%の水分が残ります。
  • 時定数の2倍の日数が経過すると、37%の37%、つまり14%の水分が残ります。
  • 時定数の3倍の日数が経過すると、37%の37%の37%、つまり5%の水分が残ります。

2023年4月9日

結局、現時点で推定した時定数としての日数は概ね“33日”程度でした。なので、2023年2月4日に伐採した今回の薪は、2月6日から、時定数の3倍の日数100日もすれば、薪に含まれる水分量は、概ね5%(伐採時の薪に含まれていた水分量が20分の一)に減少し、含水率で言えば更にその半分以下になると想像されます。

よって、今回の含水率の評価法が正しければ、測定を開始した2023年2月6日から、ほぼ100日経過した5月の連休の後には、ほぼ十分に乾燥していると推定できると考えます。

湿度の影響

ちなみに、気温が35℃の日に仮に湿度が100%であった場合、飽和水蒸気量は気体一立米あたり40gの水分が含まれていることを示しています。今回のサンプル薪束では、体積が概ね0.03立米なので、重さが10kg程度の各薪束に100%の湿度が入り込んだとしても1グラムより少ない水分が増える程度、つまり無視可能と考えます。影響するのは、乾燥に要する日数と考えています。

勿論、雨に濡れれば水分を含み、薪の重量、含水率も増えてしまうでしょう。

これからの測定

薪質量がもう少し減少し、グラフが落ち着くまで測定を続けます。その後は、薪質量がどのような変化をするのか確認のための測定になります。

2023年4月22日

仕事が多忙で、測定の間隔が約2週間開いてしまいました。追加データを図1-4-1、図1-4-2に記入しました。ただし、近似曲線の修正、再計算は5月の中旬頃に実施し、表1-4-1に相当する表1-4-2を掲載する予定です。

2023年5月1日

本日測定した新しいデータを追加しました。ただし、表1-4-1の推定値で図1-4-2のグラフを描いています。実際の測定値と推定値が少し乖離しています。次回は新しい推定値で描き直す予定です。

2023年5月13日

測定を開始してから96日が経過しました。本日の測定データを追加し、推定値を求め下記表1-4-2に示しました。図1-4-2は新しい推定値で近似曲線を描いています。時定数は何れも35日程度でした。時定数の3倍の日数が経過しましたので、本日時点で薪に残っている水分の質量は、伐採したばかりの薪に含まれていた水分が、ほぼ5%程度に減少したと推定されます。

2023年6月18日

既に梅雨に入り、測定を開始してから132日が経過しました。本日の測定データを追加し、推定値を求め上記表1-4-3に示しました。図1-4-2は新しい推定値で近似曲線を描いています。時定数は何れも42日~53日で、当初想定していた日数のほぼ2倍になろうとしています。

測定を開始した2月6日から3月20日頃までは、薪の白太(幹の外側の比較的白い部分)の乾燥が先に進み、その後、薪の中心部、すなわち赤身部分の乾燥が顕著に現れたと考えています。当初、これほど顕著に乾燥曲線に現れると思っていませんでした。より正確な近似曲線を描くのであれば、2個の異なる時定数を推定し、2個の指数関数を重ねることになります。

しかし、ここではそれほどの精度は不要なので、このまま実験と時定数の推定を続けます。

2023年7月14日

本日は雨ですが、多分、明日は梅雨明けかと思います。薪の重量の変化(軽量化)の度合いも随分小さくなりました。本日のデータを図 1-4-1 と図 1-4-2 に反映させました。

2024年1月6日

重量の測定を開始してからほぼ1年が経過しました。重量の変化の図1-4-1 から、薪に含まれる水分は概ね蒸発したと推定します。

結論

  • 伐採直後のナラ、及び桜の薪は、その含水率が40%程度であった。
  • 2月に伐採し、薪にすれば、3ヶ月~5ヶ月で乾燥は終了し、乾燥薪になった。

考察(推定)

冬に落葉した広葉樹を伐採し、薪にすれば、5ヶ月程度経過後には乾燥が終了する。つまり、伐採した冬の翌年の冬には、最適な乾燥薪となっている。

弊社での拙い経験ですが、2年以上、乾燥させた薪は、乾燥が促進されるよりも、昆虫による食害が目立つようです。最初は、薪の周囲に白い粉が散見され、更に進行すると、樹皮が剥がれ、かなりの量の白粉が発生します。

樹木では葉で光合成された栄養が、樹皮の下(内側)の形成層を伝って降りてきて樹を成長させます。昆虫も上記の光合成された栄養を糧とするため、樹皮のついた薪の「樹皮の内側」に巣くうのだと考えます。

以上のことから、綺麗な乾燥薪は、【冬に伐採→薪→乾燥】を経て、次の冬に利用することが肝であり、2年以上乾燥させた薪は、乾燥よりも昆虫による食害が目立つようになると結論しました。

なお、薪は雨に濡れると、緑色、ピンク色、あるいは白色等のカビが発生します。

弊社では、薪を濡らさぬよう、薪ダナの屋根は十分に広くし、左右と背後はビニールハウス用のビニールで囲っています。しかし、強風の翌日は、屋根の修理、ああるいはビニールの張り替えに追われます。

以上で、重量の変化から推定する薪の乾燥実験を終了します。

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