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#2-1 木に登る様子
#2-2 使用する用具
#2-3 幹にロープをかける
#2-4 ロープに仕掛けをセットする
#2-5 ツリークライムの目的

#2-1 木に登る様子

木に登る様子を撮影しました。

「最もシンプルな道具」で、「格段に腕力を必要とせず」、「最速」、それでいて「安全な方式」を目標に試行錯誤した結果です。動画を見て、興味を持たれた方は、この頁の下まで読み進めて下さい。

この動画紹介の目的は、ツリークライムの概要を見て頂くことです。

体重を預ける“Rock Exotica 製の AKIMBO”あるいは“Petzl 製の grigri3”を使用した場合について動画を記録しています。
樹に登る人間の動作はほぼ同じです。

アブミは自作しています。
両足を幹に押しつける際、左右の足先を突っ込むアブミの2個の輪がそれぞれ僅かに離れて、身体が安定するように制作しています。
また、樹上でアブミから足を抜いたり装着したりすることが多いので、アブミの輪が常に開くようにしています。
このようにしたことで、ツリークライムの際に履く靴は、伐採のみを考慮し、選択することができました。

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#2-2 使用する用具

(1) ロープ

最近のツリークライミングと岩登りは似ている点が多々あります。しかし、岩登りは落ちることを想定していますが、ツリークライミングでは落ちてはイケマセン。

岩登りでは、トップで登攀する人が墜落することを前提に、セカンドが備えます。よって、そのショックを軽減するため、ロープに体重がかかった際に伸びる(長さが30%程度伸びる)ことがロープに求められ、それらは、ダイナミック・ロープと称されます。

ダイナミック・ロープを使用していて、岩から墜落した際のショックについては、別途、簡単なモデル計算でイメージを確認する予定です。

ツリークライミングでは、落ちることは想定していません。樹の上り下りに使用します。落ちないのでロープは伸びる必要がありませんし、むしろ、伸びると手間取ります。よって、伸び率の少ない(セミ)スタティック・ロープ(長さの伸びは5%以下)が適しています。

弊社では“HTP・スタティック・ロープ”を使用しています。

弊社では、「極めて低い伸び率による高い作業効率ポリエステル材の疎水性、高い摩擦への耐性」を特徴とし、「高所作業あるいは幅広いレスキュー活動」をセールスポイントとして、株式会社レスキュージャパンから販売されている、

米国のスターリン社(https://sterlingrope.com)製、 HTP(High Tenacity Polyester :高強度ポリエステル)スタティック・ロープ (11mm、50m )を、主に使用しています。

なお、現場でロープを使用する際、毎回、束ね、そして解(ホド)く作業を繰り返します。しかし、どのように束ねてもモツレルのを避けることができませんでした。。

弊社ではロープを“籠に収納することで使用時のモツレを無くしています。

既に久しくなりますが、ボルダリングの方々が、ロープを束ねずに、リュック、あるいは袋に、たぐり寄せたロープを“たぐり寄せた順にそのまま収納する”方式を提案されていました。そこで、弊社でも、ホームセンターで少し丈夫な籠を買い求め、この方式を採用したところ、結果、それ以降、これまで一度もロープが絡むことがなくなりました。

伐採では、岩登りで「ロープを束ねた状態で放り落とす」様な場面は少なく、ロープの先端から漸次送り出すことが多いのも、この方式が適している理由と思っています。ということで、弊社では、ロープを籠に入れたまま車で現地に向かい、現場でロープを籠から出し入れし、最後の作業が終了した時点で、そのまま持ち帰っています。

なお、現在、直径が 12 mm 、9 mm の2本のナイロンロープ、9 mm 、6 mm のPEロープなど、扱うロープは増えておりますが、すべて同様に管理しており、無駄な作業が無くなり、効率が格段に改善でき、快適になったと感じています。

(2) 登下降器

現在、弊社では体重を預ける登下降器に、“Rock Exotica 製の AKIMBO”あるいは“Petzl 製の grigri3”を使用ししています。

写真左はPetzl 製の grigri3、右がRock Exotica 製の AKIMBO です。安全環付きカラビナも写しています。

Rock Exotica 製の AKIMBO —– 使用可能ロープ径は、11.5 mm ~ 13 mm

  • ロープの中間に簡単にセットできる。
  • 必ずロープの太さ毎に調整が必要とされる。
  • AKIMBOの頭を下方に、少しだけ押し下げると下りモード。
    ただし、余り強く押し下げると、下降速度が増して危険です。

AKIMBOは、登るモードから下降モードへの切り替え作業が一切不要です。
登下降器として良く考えられています。


Petzl 製の grigri3 —– 最適なロープ径は、8.9 mm ~ 10.5 mm

  • ロープの中間に簡単にセットできる。
  • ビレイを目的とした、ブレーキアシスト機能付デバイス。
  • 下降スピードは、ハンドルの回転量で調整。
    本来の使用目的はビレイデバイスです。これを登下降器として使用するのは、あくまで、自己責任になります。

(3) ハンド・アッセンダー

アッセンダーは、様々な特徴を持つ製品が、製造、販売されております。弊社でも、資金の許容範囲で買いそろえ試してみました。最終的に、ハンド・アッセンダーが、ツリークライムに適すると判断し、現在に至っています。ハンド・アッセンダーについては、ネット検索で情報はいくらでも入手できます。

(4) アブミ

当初は、岩登り用のアブミを利用していました。しかし、その着脱が今ひとつ不便でした。最近のフット・アッセンダを用いて樹に登る動画を見ると、なかなかスムーズで感動的です。しかし、弊社でもやってみましたが、コツをツカメナカッタのか疲労が激しく、私には適さないと判断しました。特に、樹上でのフット・アッセンダの着脱が面倒だと感じました。

伐採を目的としたツリー・クライムでは、樹に登りながら、時として枝に乗り移り、身体を安定させ、枝、あるいは幹を切り落とす作業をします。この際、アブミに足を差し込んだり、抜き出すのがスムースであって欲しいこと、どんな靴でも対応できるようにしたいと考え、自作することにしました。

下の写真は、加工前後のベルト・スリングです。

  • 体重をかけたアブミを樹の幹に擦ったりしますので、頑強であることを目的に、幅 20 mm 、最大使用荷重 630 kg 、ポリエステル製のベルト・スリングを利用しています。
  • ベルト・スリングは、建設現場、土木などで広く使用されるため、比較的廉価であり、入手しやすいです。なお、目的が玉掛けではないので、JIS規格外ですが、使い勝手が良い、幅20 mmの輸入品を使用しています。

  • 両端のアイ部分に足先を入れるので、常に輪が広がる様に加工しています。
  • 両足先を樹の幹に押しつけて登るのですが、両端のアイは少し離れている方が、身体が安定します。
  • 足先を入れる輪を保持するために、合成樹脂製可とう電線管として販売されている“PF管”、“CD管”を使用しています。適度に形状を維持し、頑強なのが気に入っています。どちらでも良いのですが、手元にあったサイズで結果はこのようになりました。ホームセンターで切り売りしています。
  • 金具は、玉掛時にワイヤーロープと組み合わせて使う吊り具シャックルです。ホームセンターで各種、廉価に販売されています。
  • 2個使用していますが、1個は左右のアイがズレない様に万力で押しつぶしています。もう1個は、アッセンダーにつながるロープを結びます。

弊社では、基本、2本のロープとロープを直接つなぐことは致しません。ロープが擦れて弱くなるからです。

話は逸れますが、トラックなどで荷物を固定する際、南京結びが広く利用されていますが、弊社ではいたしません。ロープで輪を作る代わりに、ロープに巻き結びでカラビナを固定しています。その他は南京結びと同一のロープ回しです。

南京結びよりも更にキツク縛ることができますし、ロープ同士が擦れて傷むのを軽減できます。

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#2-3 幹にロープをかける

(1) 米国製のスリング・ショット、あるいは、釣竿を使用し、糸のついた錘を飛ばします。

錘の重さは15号。糸をつけ、60度程度斜め上方、10 m ~ 20 m 位の距離に飛ばします。
釣り竿とリールを合わせた価格が、スリングショット1個の価格に比し、大幅に廉価なため、最近は釣り竿を多用しています。

スリング・ショットは命中率が高いのですが、飛距離はそれ程ではありません。

釣り竿を地面に立て、開放したリールから、釣り糸の繋がった錘をスリングショットで飛ばします。
ゴムは消耗品で、毎年買い換える必要があります。

釣り竿は圧倒的に飛距離が出ます。

枝の隙間をねらって、錘を直線的に飛ばす上で使いやすいのは、廉価な硬いグラスファイバー製、先調子の竿です。ただし、投げ竿及び糸の強度は、15号錘の遠投に耐えるものでなければなりません。

(2) 錘は、釣り用の重さが 15 号(3.75 g x15)、針金製のアイがついた、蛍光色コーティングが施された、なす型の鉛錘を使用します。

スリング・ショットを使用する際は、形状が、「なす型」であることがポイントです。

錘の形が球の場合、糸を結ぶ針金の部分の重さで、錘の重心が、錘の中心から針金のツイテイル方にズレ、錘がスリング・ショットから飛び出した際、縦方向に回転を始める(と考えています)ので、往々にして、スリング・ショットのゴムに巻きついてしまいます。

なお、スリング・ショット、あるいは投げ竿を使用するどちらの場合も、同じ15号のなす型錘を使用しています。

(3) 糸は、主に、蛍光色の土木用水糸を使用しています。

糸に必要なポイントは、スレに強いこと、強度が十分であることです。

弊社では、伐採において樹を倒す方向が狭く限られている場合、樹の上部にワイヤーケーブルを掛け重機で引きながら、根元にチェーンソーを入れます。この場合も、ツリークライミングと同様、先ず、釣り錘を飛ばします。

錘が目的の方向、位置に飛び、枝を飛び越すと、糸のついた錘を自重で下に降ろします。そして、錘を外し、そこにワイヤー・ケーブル、あるいはロープを接続し、釣り糸をたぐり寄せ、ケーブルあるいはロープを樹の上部を通しながら手元に引き寄せます。ですので、釣り糸は摩擦が小さく、擦れに強く、同時に、ワイヤーロープの重さに耐える丈夫さが求められます。

釣り糸ですと、PEの4本編みとか、カッタクリ用のPEラインが適しており、長らく利用してきました。しかし、海から遠い栃木県では、購入に際し、現物を確認するのが難しく、選択に手間取っていました。

最近は、ホームセンタで入手が容易であり、大変廉価なナイロン製、蛍光色の土木用水糸を流用しています。

視認性が極めて良く、錘がどこを飛んだか一目瞭然です。一方、釣り糸のように、編み込んでいないので若干使いづらい部分もあります。

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#2-4 ロープに仕掛けをセットする

(1) 錘のついた糸を、樹の上部、ロープをかけたい位置に飛ばすのが最初の作業です。

ポイントは、安全のため、幹にロープを巻き付ける場所を決定することです。場合によっては、手前から錘を飛ばし、次に向こうから錘を手前に飛ばして戻すことも必要です。

錘が、1回目で目的の位置に飛べば良いのですが、やり直す場合、錘が枝に巻きつき動かなくなることがあります。その場合、リールの側で糸を強く引き、錘の近くの糸が切れ、錘が地上に落ちる仕掛けが必要です。魚を釣る場合、先糸がその役目を担います。

弊社では先糸の長さを 30 cm 程度にし、これを外径 2.2 mm、内径 1.8 mm の 3D プリンター用 PE チューブに通して使用しています。PE チューブは適度に硬く、枝に巻きつき難く、仮に巻きついてもチューブのすべりが良いため、切れた糸が錘と一緒に滑り落ちて回収が確実になります。

(2) 糸をロープに代え、幹にセットする作業です。

先ず始めに、釣り竿を使用して、錘を樹に向かって飛ばします。

次に、錘を外し、糸の先にロープを結びつけ、リールを巻いて糸の後ろからロープに追いかけさせます。結果、ロープの先端が樹の向こうから手前に届きます。

この時、地上にはロープの先端と樹の向こうの残りロープがあります。ロープ先端にカラビナ、あるいは土木用シャックルを取り付け、木の幹を巻きつつ、残りロープをカラビナ、あるいはシャックルに通します。

後は、残りロープを引けば、次第にロープの輪が、目的とする幹の位置に巻きつきます。

幹に巻き付けるロープの選定に当たっては十分な信頼性が必要です。しかし、人がぶら下がり、それが動くため、ロープの外皮が痛みやすく寿命が短くなります。また、幹に擦れて樹の樹液が付着するのも抵抗感があります。

弊社では、アブミの製作でも使用した「合成樹脂製可とう電線管“PF管”、“CD管”」を、ロープの幹に巻きつく部分に保護管としてセットしています。“PF管”、“CD管”は、極めて軽量でありながら、非常に頑強であり、目的に合致しています。

伐採では、樹を伐り倒してしまうので不要な手順ですが、枝落としなどの場合は、幹にセットしたロープを地上から降ろせる仕掛けが必要です。

弊社では、ロープ先端のカラビナ、あるいはシャックルに、太さが 6mm ~ 9mm の PE ロープ(以後、サブ・ロープと称します)を取り付け、幹に巻きついたロープを取り外す際は、このサブ・ロープを引くことで、メインのロープ先端を地上に降ろしています。

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#2-5 ツリークライムの目的

弊社では、お客様のご依頼を受けて伐採を行っています。ただし、原則、高所作業車と重機が入れる現場では、ツリークライムは致しません。作業スピード、安全性、そして工事コストが比較にならないからです。山間部の別荘であっても、別荘が建築されている以上、建築資材、建築用クレーン等が現場で使われたはずです。よって、高所作業車と重機が入ると考えます。

一方、建築されてから年数を経て、家屋の裏側の樹木が育ち伐採が必要とされる場合など、家屋の裏側に高所作業車、あるいは重機が入れない場合があります。そういった場合に、ツリークライムが現実的な手法になります。

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